5月24日(日)晴れ、喜び勇んで行ってきました。そういえば前にもこんな気持ちになったことがありました。2年前に小沢頭首工(こさわとうしゅこう)を初めて見学した時と同じ高揚感です。

さて、これは昨年5月末に酒匂堰(酒匂川左岸幹線用水路の一部区間の名前。川を堰き止める堰ではなく用水路の名前です)を歩いた時に山王橋下流で見つけたゴム引布製起伏堰(ラバーダム、ファブリダムとも言う)です。このゴム堰の名前は川久保堰と言います。今日は珍しい川久保堰の堰上げの様子を見学しました。ここは神奈川県小田原市下大井です。

これは今朝9時頃の川久保堰です。土地改良区の組合役員さんが取水門にグリスアップをしています。
ゴム堰内の水は昨秋に排水され倒伏状態です。約7か月間この状態だったわけです。ぺしゃんこのゴム堰も見たかったのでちょうど良かったです。土地改良区の職員さんの話ではゴム堰の耐用年数は40年だそうです。見学者は私一人でしたが途中近所の人が2、3人見に来ました。過去小学生の団体見学もあったそうです。
酒匂堰には終点の万石橋まで五つのゴム製布引起伏堰(ゴム堰)があり川久保堰は最も上流に位置しています。五つとも水式ゴム堰でゴムの袋の中に水を注入するタイプです。ちなみに藤沢市を流れる引地川の石川堰は空気式です。

水式ゴム堰の仕組みを理解するため学んだことを記します。
これは今朝の右岸の様子です。水色のゴミ除けカバーが見えます。カバーの内側にゴミ除け格子・スクリーンがあり田んぼへ行く用水路の取水口です。
ゴム堰と取水口の間の護岸に白線表示があります。下線が「堰天端」、上の線は「倒伏水位」です。洪水などで貯水高さが倒伏水位に達すると自動的にゴム堰内から排水され倒伏するようになっています。

左岸の様子です。こちら側にも田んぼへ行く用水路の取水口があります。左右両岸取水です。川久保堰は酒匂堰の取水堰の中で最も広い面積をカバーしているそうです。
用水路取水口の左斜め下の開口はゴム堰に注入する水の取り入れ口です。
白いゴム堰上流側の小さな穴(黄色矢印)は操作室内の水位計とゴム堰自動排水装置につながっています。
下流側の小さな穴(赤色矢印)はゴム堰内の排水口です。洪水時の自動排水やシーズンを終えるときにここから排水し倒伏させます。
正面ブロック造りの建物は操作室で川久保堰をコントロールします。

操作室です。地上部は高さ3m位ですが中は地下室があり深さは酒匂堰の川底と同じくらいです。建物の左側は給水槽で取り入れ口から入った水はここに貯まり流入した砂を沈殿させます。ポンプにつながるL字型の配管が立ちあがっています。ポンプで吸い上げゴム堰内に注入されます。

操作室の中の様子です。モーターとポンプに複雑な配管が入り組んでいます。地下を覗くと自動排水装置の分銅型の重りがぶら下がっていました。倒伏水位に達すると分銅型が落下し排水弁が開きゴム堰内の水が排水されるそうです。壁には「ファブリダム操作要領」の掲示あり。

ポンプの呼び水給水を終え9時半頃ポンプ運転開始。
(AM9:56)大分膨らんできました。

(AM10:07)ゴム堰からの越流が止まりました。下流側にモズクガニが這い出てきました。

(AM10:14)水位が上がりゴム堰天端から越流が始まりました。右岸の白い堰天端線までもう少しです。この後の様子は一年前に撮った一枚目の写真になります。
探訪を終えて
水道みち・用水路好事家の管理人、4月のある日、酒匂川左岸幹線用水路を管理する酒匂川左岸土地改良区へゴム堰の堰上げ日時照会をしたことがきっかけで本日の見学会が実現しました。土地改良区職員さん直々の解説付きの贅沢な見学会になり、ゴム堰の知識が格段に深まりました。大変お世話になりありがとうございました。別途、私がまだ知らない用水路の紹介をいただきましたので紫陽花が咲くころに探訪したいと思います。
川久保堰の位置です。
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